青桃の「新クニウミ神話-ZONE-」をお読みいただいた読者の方のお話。
「実はわたしは70年前の8月6日に生まれたんよ。若い頃は何も思わんなんだけど、50代になってからふと意識するようになって、それ以来8月6日の原爆記念日には毎年広島を訪れて平和記念式典に参列するようしてきてん。きっとあなたも何か感じるところがあったからこそ、この本を書きはったんやろと思うの」
たしかに、言われれてみればその通りかもしれない。
彼女はヒロシマに原子爆弾が投下された日に生まれた。ただそれだけのこと。ただそこに偶然を超えた宿世を見出したその瞬間、縁(えにし)が呼び覚まされた。
それと同じく、ヒロシマへの原爆投下は青桃の中では単に歴史的事実でしかなかった。が、「新クニウミ神話-ZONE-」を書こうとインスパイアされたその途端、縁もゆかりもなかった事象が私事として青桃の血肉になだれ込んできた。
1945年8月6日ヒロシマ。その日その場所に大きなる死があり、それと入れ違いにこの世に生を受けた者があった。
2015年8月6日。この日彼女は広島の地に立ち鎮魂の祈りを捧げるのだろう。心の奥底から湧き出でる感情に絆(ほだ)されるまま、この世とあの世とを往き交う道すがらすれ違った見知らぬ人たちのために。
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